クラシックロックドリルの世界
第15回 317D/217D 中型さく岩機
317D(中型レッグハンマー 1958年:昭和33年)、217D(中型ハンドハンマー 1958年:昭和33年)
古河は昭和23年(1948年)のASD25中型レッグハンマー、昭和26年(1951年)のASD26大型レッグハンマーと業界に率先して大小のレッグハンマーを販売しました。しかしこれらレッグハンマーはハンドハンマーとの兼用のため使い勝手は必ずしも良好ではありませんでした。
そこで改めて昭和29年(1954年)から本格的にレッグハンマーの研究に着手し、昭和31年(1956年)に新型小型レッグハンマー112D、昭和32年(1957年)に新型大型レッグハンマー322Dを発売しました。
そして昭和33年(1958年)にベストセラー機ハンドハンマーASD25の後継機として満を持して317D、217Dの販売を開始しました。
317Dは手持ちレッグハンマーの決定版としてASDさく岩機の伝統であるせん孔性能、重量、操作性にバランスの取れたさく岩機となりました。
①バルブの機能が優れていて、せん孔速度が速い
空圧さく岩機の毎分の打撃力(F)は一打撃当たりの仕事量(e) ×1分間当たりの打撃数(n)となります。
F=e ×n・・・⑴
⑴の式でeが同じならばFを増加させるためにはnを増やせば良いとなりますが、そのためにはピストンの前後に高圧空気を送るバルブを短時間で切り替える必要があります。
フラッパーバルブなどの反動バルブ類や半自動バルブ類に比べて全自動バルブはバルブの移動距離が長いため短時間で切り替える事は困難とされていました。
しかし、317Dは322D、312Dの経験をもとに全自動バルブであるにも関わらず短い距離でのバルブの切換えを実現しました。低圧で動作が不安定になる反動バルブと違い、317Dは低圧でも確実に動作しました。
②回転力が強い
ASD25の約2倍の回転力が有るため、悪条件の岩質でも回転が停止せずにせん孔できる。
③バックヘッドで集中操作できる
バックヘッド部に運転・注水・レッグ空気圧調整およびレリーズなどの操作が集中装備されて取り扱い易くなっている。
④口切ボタンが装備されている
せん孔開始時にロッド(タガネ)で岩盤に孔口を付ける作業を座刳り(ザグリ)または口切(クチキリ)と言います。
作業者は口切中はロッドが岩盤表面で滑らないようにロッドと本体をしっかりと保持する事が望ましいのですが、口切開始時にはスロットルバルブ操作のためハンドルから手を離さなくてはなりません。この時、さく岩機が暴れてロッド先端の超硬チップが破損する事が頻繁に起こりました。
そこで317Dのハンドルには通常の約半分の打撃力でさく岩機を作動させる口切専用ボタンが取り付けられました。しっかりと本体を保持したまま口切作業が行えるため、超硬チップの破損を防ぐことができました。
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仕様 |
形式 |
317Dレッグドリル |
重量 |
18.7kg |
シリンダ内径 |
68㎜ |
ピストン
ストローク |
44㎜(発売時) |
バルブ形式 |
全自動バルブ
AUTOMATIC VALVE |
バルブ形状 |
チューブ+フランジ型 |
打撃数 |
2650回/分(発売時)
※後に扱い易くする為ピストンストロークを49㎜に伸ばし、打撃数を2500回/分まで引き下げた。 |
販売価格 |
"53,000円 S33(1958)年
(参考:当時の大卒初任給約13,000円)" |
レッグ形式 |
LB56 |
重量 |
11.5kg |
全長(最短) |
1320mm |
全長(最長) |
2320mm |
フィードシリンダ内径 |
φ56mm |
販売価格 |
"16,000円 S33(1958)年
(参考:当時の大卒初任給約13,000円)" |
317Dレッグドリルのせん孔姿勢
317Dからレッグに関する部品を取り除き、シンカー(下向き)用ハンドハンマーとして217Dが作られました。
317D、217Dは販売と同時に非常に好調なセールスを記録しました。また、その優秀性から112D,312D同様に国内外のメーカにコピーされて販売されました。
317Dの作動状態