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クラシックロックドリルの世界
第11回 空圧ドリフタと空圧ジャンボ

ASD33 1952年(昭和27年)
ASD35 1955年(昭和30年)

昭和初期(1930年代)の大型さく岩機(ドリフタ)の主流は米国ガードナーデンバー社の7番型ドリフタ(W7)とインガーソルランド社N75ドリフタでした。
古河はW7を、東洋工業(広島)、大成鑿岩機(愛知)、帝国鑿岩機(愛知)などはN75の同型機を製造販売していました。

メーカ デンバー インガーソルランド
形式 W7 N75
重量 63Kg 65Kg
シリンダ内径 88.9㎜(3½インチ) 88.9㎜(3½インチ)
ピストンストローク 66.7㎜(2⅝インチ) 93.7㎜(3&11/16インチ)
バルブ形式 半自動バルブ
SEMI-AUTOMATIC VALVE
反動バルブ
REACTION VALVE
バルブ形状 チューブ型 フラッパー型
掘進速度 330ミリ/分 (穴径48ミリ)
花崗岩(スチールビット使用)
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戦後になり古河はW7の性能向上型としてバルブ構造を改良した新型ドリフタASD33を1952年(昭和27年)に開発し販売しました。

メーカ 古河
形式 ASD33
重量 41Kg
シリンダ内径 88.9㎜(3½インチ)
ピストンストローク 66.7㎜(2⅝インチ)
バルブ形式 半自動バルブ
SEMI-AUTOMATIC VALVE
バルブ形状 フランジ型
掘進速度 430ミリ/分(穴径48ミリ)
花崗岩(スチールビット使用)

ASD33チラシ
ASD33チラシ
ASD33カタログ
ASD33カタログ


折からの佐久間ダム工事(1953年~1956年)のドリルジャンボ入札に古河はASD33ドリフタ搭載ジャンボで臨みましたが、デンバー社の最新型SF93ドリフタの前に敗退し、戦時中の技術停滞を改めて痛感することになりました。
危機感を持った古河は全く新しいさく岩機の開発に取り組み、1955年に全自動バルブを採用した新型ドリフタASD35を開発しました。
ASD35は先ずは奥只見ダム工事(1955年~1960年)のジャンボに採用されました(10ブームドリルジャンボ3台、5ブームドリルジャンボ1台)。
この時に奥只見ダム工事現場では黒部ダム工事(1956年~1963年)に使用するドリフタ選定のため、ゼネコンの立ち合いの下にASD35とSF93の性能試験が昼夜一週間連続で実施されました。
ここでASD35はSF93より平均10%以上高い掘進速度を示した事から、黒部ダムの第四工区、第五工区工事ではASD35を搭載したジャンボが採用されることになります。

メーカ デンバー 古河
形式 SF93 ASD35
重量 50.8Kg 53Kg
シリンダ内径 88.9㎜(3½インチ) 95㎜
ピストンストローク 88.9㎜(3½インチ) 95㎜
バルブ形式 半自動バルブ
SEMI-AUTOMATIC VALVE
全自動バルブ
AUTOMATIC VALVE
バルブ形状 チューブ型 チューブ+フランジ型
掘進速度 - 600ミリ/分 (穴径48ミリ)
花崗岩(超硬ビット使用)

ASD35チラシ
ASD35チラシ
ASD35仕様書
ASD35仕様書



ASD33は程なく生産中止になりましたが、ASD35は後継機のD95空圧ドリフタと共に昭和50年代に油圧ドリフタが実用化されるまで古河空圧ドリフタの代表として各種ドリルジャンボに搭載され、新幹線、高速道路等のトンネル工事て活躍しました。
1960年代までの古河大型空圧ドリルジャンボの姿と納入先を極一部ですがご紹介します。ジャンボはトンネル形状に合わせて一台一台専用設計されています。

使用現場 ブーム数 台数 発注会社 納入年月
奥只見発電所 10 3 電源開発㈱ 1955年10月
御母衣発電所 17 2 電源開発㈱ 1957年7月
黒部第四発電所 11 2 佐藤工業㈱ 1957年7月
御母衣発電所 15 佐藤工業㈱ 1958年2月
北陸本線
北陸トンネル
21 1 西松建設㈱ 1958年4月
十津川発電所 11 2 飛島建設㈱ 1958年12月
伊豆急行
河津浜トンネル
11 1 清水建設㈱ 1960年5月
中央本線
新小仏トンネル
4 1 佐藤工業㈱ 1962年2月
上越線
新清水トンネル
11 2 鉄建建設㈱
前田建設㈱
1964年4月
木曽川発電所 10 1 飛島建設㈱ 1965年10月
奥蔭平(かげだいら)
発電所
11 1 ㈱間組 1965年12月
東名高速
日本坂トンネル
- 1 大成建設㈱ 1966年5月
西武秩父線
正丸トンネル
11 1 前田建設工業㈱ 1967年10月
只見中線
田子倉トンネル
11 1 前田建設工業㈱ 1967年11月
山陽新幹線
帆坂トンネル
9 1 鉄建建設㈱ 1967年12月
奥羽線
松原トンネル
10 1 ㈱大林組 1968年10月
気仙沼線
横山トンネル
11 1 前田建設工業㈱ 1969年4月
全断面用15ブームドリルジャンボ
全断面用15ブームドリルジャンボ
全断面用11ブームドリルジャンボ-1
全断面用11ブームドリルジャンボ-1
全断面用11ブームドリルジャンボ-2
全断面用11ブームドリルジャンボ-2
全断面用11ブームドリルジャンボ-3
全断面用11ブームドリルジャンボ-3
全断面用11ブームドリルジャンボ-4
全断面用11ブームドリルジャンボ-4
上半用9ブームドリルジャンボ
上半用9ブームドリルジャンボ
導坑用4ブームドリルジャンボ
導坑用4ブームドリルジャンボ



次回はASD22(22D)の予定です。