クラシックロックドリルの世界
第20回 PB40/B33/B44/B60/B90 大型空圧ハンドブレーカ/ペービングブレーカ
我が国のコンクリート解体工事は、長らく大ハンマーやノミ、つるはし等による人力解体で行われてきました。
戦後、進駐軍により打撃のみの空圧さく岩機である手持ち空圧ブレーカが持ち込まれ、GHQ関係の解体工事で使用されましたが、国内現場ではポータブルコンプレッサが普及していなかったため広く使用されることはありませんでした。(1956年の有楽町ピカデリー解体工事はブレーカなしで行われたと言われています)
その後、1953年に国産エンジン式コンプレッサーが相次いで販売(古河鉱業、北越工業)されるようになるとコールピックCA7やピックハンマーAD3、PA16などが使用されるようになりましたが、これらの軽量ブレーカは下向きに全体重を掛けるような重解体には不向きでした。
そこで、米軍で使用されていた重量60ポンド(30kg)以上の大型ハンドブレーカを参考に国内各社で解体用大型ブレーカが製作されました。大型ブレーカは主に路盤掘削に使用されましたのでペービングブレーカと呼ばれました。
これらの大型ブレーカは粉塵の多い環境で長時間使用しても外部からシリンダ内へ粉塵が侵入しないようにロッド側にタペット(アンビルブロック)と呼ばれる部品が付属していました。
オリジナルの米国製ブレーカは反動バルブを採用しているため、ピストンの前後運動切り替え時の反動が非常に大きくなることから、古河はバルブ機構を半自動バルブとして反動を抑えたブレーカを販売しました。
機種 |
PB30 |
PB40 |
重量 |
32kg |
40kg |
シリンダ内径 |
63㎜ |
63㎜ |
ピストンストローク |
155㎜ |
155㎜ |
バルブ形式 |
半自動バルブ
Semi Automatic VALVE |
半自動バルブ
Semi Automatic VALVE |
打撃数 |
1050回/分 |
1100回/分 |
初期のタイプは、さく岩機と同じようにバックヘッド(ハンドル)からフロントヘッドまでをスルーボルトで締結していましたが、むき出しのボルトが折損することから、スルーボルトを使用しない形式に改良されました。
機種 |
B33 |
B44 |
重量 |
32kg |
36.6kg |
シリンダ内径 |
54㎜ |
60㎜ |
ピストンストローク |
170㎜ |
170㎜ |
バルブ形式 |
半自動バルブ
Semi Automatic VALVE |
半自動バルブ
Semi Automatic VALVE |
打撃数 |
1150回/分 |
1150回/分 |
反動の少ないB33、B44は国内市場で広く販売されました。また中東向けに多数輸出されました。
一方、オリジナルの米国製ブレーカに範を取った製品(古河製品名:B60、B90)は古河だけでなく国内各社で製作販売され、CA7と同じように部品に互換性があることからオリジナルが販売されていたアメリカおよび中南米へ多数輸出されました。
機種 |
B60 |
B90 |
重量 |
30.5kg(67.3lb) |
42kg(92.6lb) |
シリンダ内径 |
57.2㎜(2¼in) |
66.7㎜(2⅚in) |
ピストンストローク |
104㎜(4・3/32in) |
154㎜(6・1/16in) |
バルブ形式 |
反動バルブ
REACTION VALVE |
反動バルブ
REACTION VALVE |
打撃数 |
1550回/分 |
1400回/分 |
これらの大型ブレーカは30kg以上の重量がありましたが、打撃時の反動を抑えるために更に30kg以上の体重を掛けて使用する必要があります。
破砕力が大きくてもこのクラスのブレーカを日本人が使用するのは厳しかったようで、国内ハンドブレーカの主な販売は一つ下の重量15㎏(30lb)~20kg(40lb)の中型ブレーカとなりました。
B44の作動状態
次回は中型空圧ハンドブレーカの予定です。