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クラシックロックドリルの世界
第18回 D77L/D88L/PD90L 大型レッグドリル

D77L,D88L (1974年:昭和49年) PD90L(1986年;昭和61年)
d77 レッグドリル
D77 レッグドリル
d88l レッグドリル
D88L レッグドリル
d77lとd88l
D77LとD88L レッグドリル
pd90l レッグドリル
PD90L レッグドリル

F7、F8、F10レッグドリルは軽量高性能な事から高い評価を受け、鉱山だけで無くスェーデン工法というレッグドリルをドリルプラットフォーム(レッグドリル作業台車)に搭載して施工する土木トンネル工事でも使用されました。

デッキ型ドリルプラットフォーム
デッキ型ドリルプラットフォーム

しかし1970年代になると石灰鉱山での採掘はレッグドリルを使用する傾斜面採掘法からクローラードリルと大型トラックなどを使用するベンチカット工法に変わり、国内金属鉱山の多くも閉山(足尾銅山:1973年閉山)しました。土木トンネル工事でも大型ドリフタを用いるジャンボでの施工が主流となったことから国内のレッグドリル需要は減少することになりました。
そこで新たな販路として手持ちさく岩機は海外輸出に力を入れることとなりましたが、既にアジア市場(中国、台湾、韓国、フィリピンなど)では中型レッグドリル322Dが高いシェアを持っていましたので、新しい市場として欧米市場に目がむけられましたが欧米市場では防音・防振対策が施された大型手持ちさく岩機が主流でした。
そこでD77LとD88Lはそれまでの古河さく岩機の経験を集大成した防振・防音レッグドリルとして開発されました。特にD88Lはシリンダ内径φ90㎜と古河手持ちさく岩機としては最大径となりました。

d77l 海外向けリーフレット
D77L 海外向けリーフレット
d77l 海外向けリーフレットの仕様表
D77L 海外向けリーフレット 裏面

機種名 D77L D88L F7 F8 F10
シリンダ内径xピストンストローク φ76mmx64mm φ90mmx50mm φ75mmx49mm φ75mmx70mm φ85mmx49mm
重量 28.4kg 28.2kg 22.9kg 26.0kg 27.1kg
バルブ形式 全自動バルブ 反動バルブ 全自動バルブ 全自動バルブ 全自動バルブ
打撃数 2000回/分 2600回/分 2450回/分 1950回/分 2600回/分

D77L、D88Lの特徴
①ピストンの打撃エネルギーを効率的に岩石に伝達し、反動の少ないピストン形状となっている。
D77L,D88Lのピストンは断面積が急激に変化しない形状となっています。
D88Lは、欧米製品並みに打撃数を増やすため、移動量が少なく切替しやすい反動バルブを採用しました。

ピストン
ピストン
後面
後面

②特殊マフラーにより排気音を消音している
シリンダ排気孔に特殊箱型マフラーを溶接し、打撃音エネルギの75%(約6dB(A))を消すことに成功しました。
排気孔
D88L 排気孔

一般に排気マフラーを取り付けたさく岩機では寒冷時に排気孔の氷結が問題になります。
空圧さく岩機の動力源である圧縮空気中には水蒸気が含まれていますが、圧縮空気は排気孔から放出される時、断熱膨張によって温度降下をします。
この時水蒸気の一部は凝結して排気孔周辺に付着します。もし氷点下に温度降下すると排気孔に氷結が発生して排気効果を悪くし、さく岩機の動作不良を引き起こします。
マフラーが無いさく岩機ですとシリンダから直接大気に排出される排気は圧力が高いため氷結部分が吹き飛ばされますが、マフラー付属さく岩機はマフラー内部が氷結する事が起こりました。
D77L、D88Lのマフラーは他社よりも氷結の発生しにくい構造でしたが、完全に防ぐ事は困難な事から各社ともマフラー付きさく岩機は圧縮空気中の水分を除去するドレーン抜き装置と不凍さく岩機油の使用を推奨しました。

各モデルの排気マフラの特長
各モデルの排気マフラの特長

③防振が十分に考慮されたハンドルグリップの採用
Fシリーズの防振グリップに更に改良が施され、防振効果を高めつつもしっかりさく岩機を保持できました。

④大型リトラクタブルレッグLC77の採用
当時ヨーロッパのトンネル工事ではジャンボ工法だけでなく、取扱いの簡単なレッグドリルを使用するスェーデン工法も広く行われていました。
しかしレッグドリルはセン孔位置と方向を正確に行うことが困難でしたので、この点を改善したラダー工法が開発されました。これは2枚のL型鋼の間に丸棒を約200㎜間隔で溶接した細長いラダー(はしご)にレッグドリルを載せ、これをプラットフォームに搭載して使用する工法です。
レッグの爪をラダーに引っ掛ける事でレッグの力を利用してさく岩機を岩盤に押し付ける事ができます。ラダー工法はドリルの位置決めが正確になるだけでなく、ドリルを手で持つ必要が無いため作業者の疲労が軽減します。
また、岩質の変化に合わせてレッグドリルをラダーから取り外して使用することにより全断面工法からベンチ工法へと簡単に切り替えることもできる点がジャンボ工法よりも優れているとしてラダー工法は1960年代のヨーロッパでは盛んに実施されました。モンブラントンネル:11.8km(1959年~1965年)ではイタリア側はラダー工法、フランス側はジャンボ工法で施工されました。

そこでD77LとD88Lではラダー工法にも適応できるように、長尺ロッドに対応した伸縮両方が圧縮空気の力で動く専用のリトラクタブルレッグLC77が同時開発されました。LC77はラダーに爪が引っ掛けやすい様にそれまでの2本爪から4本爪になっています。
穿孔してレッグが伸びきった後、圧縮空気でレッグを縮めて、次のステップに引っ掛けます。

LC77 レッグ
LC77 レッグ

レッグ形式 LC77
重量 18.7kg
全長(最短) 1830mm
全長(最長) 3130mm
フィードシリンダ内径 67mm

1986年にはD88Lからマフラーを取り除きゴム製排気カバーを採用し、かつロッド取付部の構造を改良したPD90Lが開発されました。
D88Lのフロント部を改造した、ライトドリフタPD90も開発されました。
PD90L レッグ
PD90L
機種名 PD90L
シリンダ内径x
ピストストローク
φ90mmx50mm
本体重量 28.6kg
バルブ形式 反動バルブ
打撃数 2500回/分

PD90Lは古河が開発した最後のレッグドリルとなります。

D77Lの作動状態

引用 トンネル工事用機械,小竹秀雄,理工図書株式会社,1963

次回は番外編⑥:空圧さく岩機のロッド・ビット-⑵の予定です。

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