クラシックロックドリルの世界
第10回 PA16 ピックハンマー
1956年
CA7より打撃力の強いコールハンマとしてAD3が開発されましたが、古河好間炭鉱からはさらに強力なコールハンマーの要望が出てきました。
また、ASD18と同じ精密なバルブセットを使用するAD3は粉じんの多い現場での使用にあまり適さないことから、新しいコールハンマーはより簡便なバルブ構造が求められました。
そこでPA16コールハンマーには開発期間短縮のため、実績のあるインガ―ソルランドR39さく岩機のフラッパーバルブセットを流用する手法が取られました。
フラッパーバルブは僅かに山状に加工されたバルブがパタパタと左右に動く事で空気の通路を切り換えます。
形は大きく変わっていますが、フラッパーバルブは初期インガーソルランドさく岩機のバタフライバルブの進化系で有る事が分かります。
フラッパーバルブは加工が簡単でASD18、ASD25のチューブ型バルブの様に高精度な内径加工が必要無い事から、初期の国産さく岩機メーカのほとんどはインガーソルランド形式のさく岩機を生産しています。
欠点は打撃にムラが発生しやすくて使用中に機械が停止してしまう事でした。しかし短時間の打撃を繰り返すコールピック用途では問題にならず、ゴミにも強い事からPA16では採用されました。
|
PA16 |
重量 |
15.8Kg |
シリンダ内径 |
60㎜ |
ピストンストローク |
50㎜ |
バルブ形式 |
反動バルブ
REACTION VALVE |
バルブ形状 |
フラッパー型 |
打撃数 |
1700回/分 |
販売定価 |
34,500円:昭和33(1958)年 (参考:当時の大卒初任給約13,000円) |
戦後の屋外でのコンクリート構造物の解体工事は大ハンマやつるはしなどによる人力で行われていましたが、1953年に国産エンジン式コンプレッサーが相次いで販売(古河鉱業、北越工業)されると、コールピックCA7、ピックハンマーAD3、PA16などによる機械式解体が行われるようになり、解体工事の効率化が進みました。
PA16の作動状態
次回は番外編③「空圧さく岩機のしくみ(構造)」の予定です。