クラシックロックドリルの世界
番外編③ さく岩機のしくみ(構造)
さく岩機とは岩盤に火薬装填の孔を開ける機械です。
タガネが岩石を打撃しても岩石は破砕されるだけすが、回転しながら岩石を打撃する事により孔が開きます。
手持ちさく岩機は小さな本体の中に圧縮空気の力でタガネを毎分2000回打撃をしながら200回転する機構が組み込まれています。
今回は空圧さく岩機の打撃と回転のしくみについて317D(1958年:昭和33年発売)のカットモデルを使用して説明します。
317Dは全自動バルブ(Automatic-Valve)機構を採用しています。古河では1955年(昭和30年)開発のASD22以降のほぼ全ての空圧さく岩機が全自動バルブを採用しています。
(1)打撃のしくみ
さく岩機はバルブがピストンの前後に交互に高圧空気を送る事によってピストンがシリンダ内を往復運動し、ピストンが前進した時タガネを打撃します。
317Dが使用している全自動バルブは高圧空気の力で直接バルブが切り替わるため、その他のバルブ形式に比べて少ない空気消費量で最も確実かつ迅速にバルブが切り替わることが特徴です。
①ピストン前進
写真ではピストン、バルブ共に後退している状態です。
外部からの高圧空気(圧縮空気)はスロットルバルブからバルブチェスト内部の通路を経由してバルブとの隙間を通りピストン後側に導かれ、ピストンを前進させます。
②バルブ前進
前進するピストンがバルブ切り替え孔①を通過すると、高圧空気が切り換え孔①を経由してバルブチェスト内部の通路を経由してバルブ後部に導かれバルブを前進させます。
ピストンはなお前進します。
③ピストン後進
前進したバルブによりピストン後側への高圧空気が遮断されると同時に、今度はピストン前側へ高圧空気が導かれ、ピストンを後退させ始めます。
ピストン後側の高圧空気は排気孔から大気中に放出されます。
④バルブ後進
後進するピストンがバルブ切り替え孔②を通過すると、高圧空気が切り換え孔②を経由してバルブチェスト内部の通路を経てバルブ前部に導かれバルブを後進させます。
ピストンはなお後進します。
⑤後進したバルブがピストン前側への高圧空気を遮断すると同時にピストン後側に高圧空気を給気します。ピストン前側の高圧空気は排気孔から大気中に放出されます。
以後、①からのサイクルを繰り返します。
(2)回転のしくみ
さく岩機のタガネに回転を与える機構は大きく(A)独立型 と(B)関連型の二種類に分類されます。
(A)独立型:ピストンの動きと全く関係無しに別にモーターによる回転機構を儲けるものです。
構造複雑で重量が増しますが、回転力が強く、回転数を自由に設定できることから、台車に搭載する大型さく岩機(ドリフタ)に採用されています。
(B)関連型:ピストンの往復直線運動をねじれ(ライフル)溝とラチェット機構により一定方向の回転に変える事により、ピストンと直結しているタガネに回転を与えるものです。
独立型より軽量小型になることから手持ちさく岩機はこの型となります。
関連型は更に(a)ライフルバー型と(b)ピストンライフル型に別れますが317Dはに(a)ライフルバー型となります。
ライフルバーは右捻じれのライフル溝が切ってあり、ピストンにねじ込まれたライフルナットと嚙み合っています。またライブルバーはラチェット機構により一定方向(後ろから見て左方向)にしか回転しないようになっています。
このため、ピストン前進時にピストンにライフル溝に沿って後ろから見て右方向への回転力が発生してもライフルバーが空転するためピストンは真っ直ぐに前進し、タガネが回転することはありません。
ピストン後退時にピストンにライフル溝に沿って後ろから見て左方向の回転力が発生した時はライフルバーが空転しないためピストンは後ろから見て左方向にタガネと一緒に回転します。
回転運動はピストン後退時のみ行われるので打撃エネルギーを無駄に消費しません。
一打撃毎のタガネの回転角度はライフルの捻じれ角度によって決まり、普通は打撃10回前後で一回転します。各メーカとも標準捻じれ角のライフルバーの他に捻じれ角を変えたオプションのライフルバーを製作し、客先の岩質に対応できるようにしていました。
標準より回転数が少ない:硬岩用
標準より回転数が多い:砂岩、頁岩、石炭用
以上、簡単ですが空圧さく岩機の打撃と回転のしくみの説明です。空圧さく岩機の構造をご理解いただけたでしょうか。
これらさく岩機の各部品は1/100ミリ以下の寸法精度で加工され、ゴム製オーリングや樹脂パッキン類を使用しないでも隙間から高圧空気が漏れるのを防いでいます。
317Dの作動状態
次回は「空圧ドリフタASD33,ASD35と古河空圧ジャンボ」の予定です。